- 研究トピックス
イネの生長を制御する植物ホルモンのはたらきに新たな発見(生産科学科:坂本知昭准教授)
2013年5月16日
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本学生物資源環境学部生産科学科の坂本知昭准教授らの研究グループが、モデル作物のイネを用いて植物ホルモンの1種であるオーキシンが別種の植物ホルモンであるブラシノステロイドの感受性を高める働きを持つことを証明しました。本研究成果は2013年2月に英国の科学雑誌「The Plant Journal」に掲載されました。さらに同様の制御機構がモデル植物のシロイヌナズナにも存在することを示し、2013年4月に米国のオンライン科学雑誌「Plant Signaling & Behavior」に発表しました。 オーキシンによるブラシノステロイド感受性の制御が、単子葉植物のイネだけでなく双子葉植物のシロイヌナズナでも認められたことは、この制御機構が植物の生育や発達において重要かつ普遍的に機能していることを示しており、作物の人為的生長制御技術の開発に結びつくことが期待されます。 |
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<研究内容>
植物ホルモンは植物体内で合成され、ごく低濃度で様々な生理反応を引き起こす生長調節物質です。現在までに7種類の物質が植物ホルモンに認定されており、そのうちオーキシンとブラシノステロイドはそれぞれ独自の機能を持つと同時に、共力的に働くことが知られています。 今回、坂本准教授らの研究グループは、オーキシンがイネのブラシノステロイド受容体遺伝子OsBRI1の発現を誘導し、受容体タンパク質OsBRI1を増加させることにより、ブラシノステロイド感受性を高めていることを証明しました。さらにオーキシンによるOsBRI1遺伝子の発現調節メカニズムを分子レベルで明らかにしました。受容体は植物細胞が植物ホルモンを感じ取るための起点に相当する重要なタンパク質です。したがってこの制御機構は、オーキシンとブラシノステロイドの共力作用を支える主要なメカニズムの1つであると捉えることができます。
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<成果の応用>
ブラシノステロイドが示す生理機能の1つに、ストレス(低温、高温、塩など)に対する耐性付与があります。しかしブラシノステロイドは複雑な化合物であるため合成が難しく、コスト面から植物生長調節剤としての実用化が困難な状況にありました。今回の成果は、散布量を減らしても感受性を高めることによって十分な効果が得られる可能性を示しており、ブラシノステロイドを利用して作物にストレス耐性を付与する栽培技術の確立へ道を拓きました。同研究グループは、ブラシノステロイドを利用して葉の角度を調節し、光合成能力を高めてイネの収量を増加させられることを、2006年に英国の科学雑誌「Nature Biotechnology」に発表しております。この成果と今回の成果を組み合わせることにより、同研究グループはストレスに強い安定多収技術の開発を目指しています。
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<お問い合わせ先>
竞彩足球_足球彩票-现金网重点推荐生物資源環境学部生産科学科作物生理学研究室 准教授
坂本知昭
電話番号:076-227-7441
E-mail:sakamoto[at]ishikawa-pu.ac.jp ※[at]を@に変えてください。