- 食品科学科
食物繊維が粘膜免疫機能の増進に役立つメカニズムを発見
2023年4月21日
健康維持のためには、病気を防ぐための抗体が重要な働きをしており、その一種の免疫グロブリンA(IgA)は、腸管など人の粘膜において毒素や病原体の侵入を防ぐ粘膜バリアとして重要な役割を果たしています。食品科学科松本健司教授らの研究グループは3種類の異なる水溶性食物繊維をサンプルとして、水溶性食物繊維の摂取が腸や肺などの粘膜組織におけるIgAの産生にどのような影響を与えるかを普通のマウスとT細胞が欠損したマウスを用いて比較検討しました(T細胞は免疫機能に関わるリンパ球の一種です)。これまで、食物繊維による粘膜IgAの産生に関する誘導メカニズムは、腸内細菌によって食物繊維から変換された短鎖脂肪酸(主に酢酸、プロピオン酸、酪酸)を介して誘導される、という説が一般的でした。本研究グループは今回、腸管IgAの産生には短鎖脂肪酸を介さない経路が存在することや、肺におけるIgA産生には短鎖脂肪酸とT細胞の存在が必要であることを明らかにしました。健康への関心が世界的に広がる中、食物繊維素材は健康への有効性から年々需要が増加しており、これらの研究結果は食物繊維素材が免疫機能に与える影響を解明する上で重要な知見となります。本成果は澤野穂乃香さん、大坪茉里奈さん、由井明日香さんの卒業研究をまとめたものでThe Journal of Nutritionで公開されました。
経路図
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